ヒコーキとサービスと運賃と
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いい加減にしなさい。
と、つい云いたくなるのが、航空運賃のバカ高さだ。
6万円あったらグアムだって北京だって、パッケージツアーで行けるじゃないか。
しかも4日間、ホテル代込みだ。
(後略)
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近頃はLCC(Low Cost Carrier 格安航空会社)の出現で安い航空運賃で行けるところも多くなってきました。
1933年生まれの私にとっては、まるで嘘のような運賃です。
私が会社勤めの頃には、東京からヨーロッパの主要都市へ行くには、エコノミークラスの運賃が往復40万円くらいしたものです。
それが最近のウエブの広告なんかで見ると、大手航空会社でもヨーロッパ往復は9万円とか高くても10数万円くらいです。LCCだったらいくらになるのでしょう。
驚きを通り越して、おい、大丈夫かいと、聞きたくなります。
大丈夫かい、というのは採算がとれるのかと航空会社の懐具合を心配しているわけではありません。
落ちるのじゃないかという心配です。
ま、私の場合はもう老い先短いから、いつ死んでも構わないという考えも、ほんの少しはあるけれど。しかし、ヒコーキが墜落して死ぬのはいやです。墜落して死ぬまでの間の恐怖感に耐えられません。
私がまだ会社員だった時に、朝日新聞に書いた雑文があります。
思い出して引っ張り出してきました。ちょっと、我慢して読んでいただきたい。
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1991年10月6日付 「ハーフミラー」の一部抜粋
「いのち」
ヨーロッパの航空会社は、いま生き残りをかけたサービス合戦のまっただなかにある。
日本人のお客さんに和食を用意するのは当たり前。その食事の献立も年ごとに手の掛ったものになってきた。
ここまでくると、いっそのこと航空運賃から食事代を引いてしまい、飛行機に乗る前に、わたしは辻留の懐石膳がいいわ、いやおれは竹葉亭のうな重だと、好きなものを成田空港で買うようにしたらいいんじゃないかと思ったりしている。
機内にうなぎのにおいやら、みつばの香りがだたよってきたら、飛行機に弱くて食欲のない人も、おなかがググーと鳴り出すかもしれない。
しかし、どんなに機内サービスが良くなっても、しょせん、そのうつわであるヒコーキに「いのち」がゆだねられている。とことん吸い取り式トイレの発明が、こんなにも空の旅を楽しいものにしてくれるのだから、「絶対落ちない飛行機」が開発されたら、ぼくは食事が出なくても、スチュワーデスがいなくても、がまんしちゃう。
弁当とウイスキーだけは持ち込んで。
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この文章を書いてから、もう20年がたちました。
私がその頃、夢見ていたことが、今では現実になりました。
運賃が安いのは大賛成。しかし、客は自分で安全を選べません。
安くて、絶対安全な航空会社があったら、どなたか、ぜひ、教えてくださいませんか。